青森県の津軽地方を走るローカル線、津軽鉄道。その津軽鉄道が冬季に運行するのが「ストーブ列車」です。古い客車に設置されただるまストーブで暖をとりながら、焼いたスルメを食べながら旅ができる、とてもレトロな列車です。今回は、津軽鉄道の「ストーブ列車」の乗車記をお届けします。
津軽鉄道「ストーブ列車」とは?
津軽鉄道は、青森県津軽地方のローカル私鉄です。路線は「津軽鉄道線」の1路線のみの小さな会社です。津軽鉄道線は、津軽五所川原駅~津軽中里駅を結ぶ20.7kmの非電化路線です。全線が単線で、駅の数は12。津軽地方に根ざした小さな鉄道路線です。
そんな津軽鉄道が、毎年12月~翌年3月の冬季に運行するのが「ストーブ列車」です。
津軽鉄道「ストーブ列車」2023~24年シーズンの運行日・ダイヤ
2023-24年シーズンの運転では、「ストーブ列車」単独の列車ではなく、通常の定期運行列車に、ストーブ列車用の客車を連結して運転されます。
津軽鉄道は非電化路線ですので、通常の定期列車は気動車で運転されます。その気動車の後ろに、ストーブ列車の乗客が乗る客車を連結する形です。気動車が客車を牽引するのです。
2023~24年シーズンの運行日・ダイヤは以下のとおりです。
- 津軽鉄道「ストーブ列車」運転日
- 2023年12月1日~2024年3月31日
- 151列車・152列車は、12月中は12月1日と土休日のみストーブ列車を連結
例年、「ストーブ列車」は12月~3月の4か月間運転されます。運転日には3往復(12月中の平日は2往復)運転されます。
2023~24年シーズンの「ストーブ列車」のダイヤは以下のようになっています。
【下り(津軽中里行き)】
151列車 | 153列車 | 155列車 | |
---|---|---|---|
津軽五所川原 | 09:35発 | 12:00発 | 14:40発 |
金木 |
10:01着 10:05発 |
12:26着 12:30発 |
15:06着 15:10発 |
芦野公園 | 10:08発 | 12:33発 | 15:13発 |
津軽中里 | 10:20着 | 12:45着 | 15:25着 |
【上り(津軽五所川原行き行き)】
152列車 | 154列車 | 156列車 | |
---|---|---|---|
津軽中里 | 10:53発 | 13:37発 | 15:54発 |
芦野公園 | 11:04発 | 13:49発 | 16:06発 |
金木 |
11:07着 11:11発 |
13:52着 13:56発 |
16:09着 16:12発 |
津軽五所川原 | 11:37着 | 14:22着 | 16:38着 |
※上記は主要停車駅のみの時刻を掲載。途中停車駅は、十川、五農校前、津軽飯詰、嘉瀬、金木、芦野公園、大沢内です。
詳しくは、津軽鉄道Webサイトの「ストーブ列車」のページをご覧ください。
津軽鉄道「ストーブ列車」に乗車するには乗車券と「ストーブ列車券」が必要!
津軽鉄道の「ストーブ列車」に乗車するには、乗車券のほかに「ストーブ列車券」(500円)が必要になります。
この「ストーブ列車券」、事前予約やWebサイト等での購入はできないようですので、乗車したい日に、乗車する駅で購入する必要があります。
今回は、津軽中里駅→津軽五所川原駅のストーブ列車に乗車しましたが、津軽中里駅の窓口で乗車券と一緒に購入しました。いずれも硬券タイプのきっぷで、「ストーブ列車券」は号数のところにハサミが入れられています。
津軽五所川原駅~津軽中里駅の全区間に乗車すると、以下のように合計1,370円となります。
- 乗車券: 870円
- ストーブ列車券: 500円
往復とも「ストーブ列車」に乗車する場合には、上記の2倍の2,740円となります。
津軽鉄道へのアクセス
津軽鉄道の起点駅は津軽五所川原駅ですが、この駅は、JR奥羽本線の五所川原駅に隣接しています。
津軽五所川原駅への鉄道でのアクセス
五所川原駅への鉄道(普通列車)でのアクセスは、以下のとおりです。
- 青森駅・新青森駅からのアクセス
- 青森・新青森 → 川部(JR奥羽本線 約30分)
- 川部 → 五所川原(JR五能線 約30分)
- 秋田駅からのアクセス
- 秋田 → 弘前(JR奥羽本線 約2時間20分)
- 弘前 → 五所川原(JR五能線 約40分)
五所川原駅は、秋田~青森間を五能線経由で走る観光列車「リゾートしらかみ」の停車駅ですので、「リゾートしらかみ」の乗車とあわせての訪問もおすすめです。実際、筆者は、秋田駅から「リゾートしらかみ1号」に乗車して、五所川原駅で下車しました。
「リゾートしらかみ」については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
津軽中里駅へは弘南バス(路線バス)でもアクセス可能
津軽鉄道は列車の本数が多くありません。「ストーブ列車」が運転されている日中時間帯は、おおむね1~1時間半に1本程度です。
また、「ストーブ列車」は、いったん津軽中里駅に到着すると、そのまま折り返しの「ストーブ列車」となって運転されます。
往復とも「ストーブ列車」に乗れば良いのですが、JR線との乗り継ぎが悪いと、「ストーブ列車」の乗車までかなり待つことになります。
そこで、路線バスで津軽中里駅へアクセスする方法をご紹介しましょう。
弘南バスの「五所川原~小泊線」が、五所川原駅と津軽中里駅を経由します。所要時間は44分、運賃は840円です。1日6往復ありますので、五所川原駅への到着のタイミングや、ストーブ列車の時刻次第では、有力なアクセス手段になります。
乗車記のところで詳しくご紹介しますが、今回、「リゾートしらかみ1号」で五所川原駅に到着したのが12時08分。次の「ストーブ列車」は14時48分発でしたので、2時間半以上も待ち時間が発生してしまいます。
そこで、弘南バス「五所川原~小泊線」を利用しました。
- 秋田 08:19発 → 五所川原 12:09着(リゾートしらかみ1号)
- 五所川原駅前 12:40発 → 中里駅前 13:24着(弘南バス)
- 津軽中里 13:37発 → 津軽五所川原 14:22着(津軽鉄道 ストーブ列車)
※2023-24年シーズンのダイヤです
津軽中里駅での乗り継ぎ時間は13分、実際はバスが2~3分遅れたので、10分くらいしかありませんでしたが、「中里駅前」は本当に駅前ですので、きっぷとストーブ列車券を購入して、ストーブ列車に乗り込むには十分でした。
路線バスですので、遅延することを考慮しないといけませんが、今回の乗り継ぎ例のように、うまく活用できることもありますので、覚えておくとよいと思います。
津軽鉄道「ストーブ列車」乗車記
2021年3月に五能線「リゾートしらかみ」を五所川原駅で下車して、津軽鉄道の「ストーブ列車」に乗車した際の乗車記をお届けします。乗車記中のダイヤは2021年のものですのでご注意ください。
弘南バスで津軽中里駅へ
秋田駅から乗車した「リゾートしらかみ1号」は12時08分に五所川原駅に到着。前述のように、津軽鉄道の「ストーブ列車」との乗り継ぎがよくないので、路線バスで津軽中里駅へ向かう作戦です。
JR五所川原駅には、津軽鉄道の津軽五所川原駅への連絡口がありますが、ここはスルーして、JRの改札を出ました。
JR五所川原駅の隣にある津軽鉄道の津軽五所川原駅の駅舎です。駅舎はJRのものとは独立しています。この古さがなんとも言えないですね。入口のところにある木の引き戸なんか最高です。
ここから列車に乗りたかったのですが、前述のとおり、乗り継ぎが良くないため断念。駅前の道路を挟んで反対側にある弘南バスのバス乗り場へ向かいます。
バス乗り場のほうも、ずらっと並んだアルミサッシの引き戸が時代を感じさせます。早速、中へ入ってみます。
広々とした町愛知素には、ずらっと椅子が並んでいます。待合室の奥には蕎麦屋とおやきのお店があり、バスを待つ人だけでなく、地元も方も利用されているようです。
待合室の壁にはバスの時刻表が掲載されていますが、漢数字で時刻が書かれています。駅前の風景といい、本当に昭和にタイムスリップしてしまったような感覚に陥ります。
バスまで少し時間があったので、おやきを買ってみました。思ったより大きく、餡子もたっぷり入っていました。これで90円! かなりお得感がありました。
12時40分発の小泊行きのバスに乗車。バスは、五所川原の市街地をぐるっと一周したあと北へ向かいます。途中、津軽鉄道の金木駅、芦野公園駅を通ります。金木にある斜陽館や津軽三味線会館などを観光するのにも、津軽鉄道とあわせて使える路線バスです。
途中、5分ほど遅延して焦りましたが、津軽中里駅には2~3分の遅延で到着しました。
津軽中里駅からガラガラの「ストーブ列車」に乗車!
バスを降りれば、目の前が津軽中里駅です。津軽五所川原駅とは違って小奇麗な駅舎です。
発車まで10分ほどしかないので、早速、窓口で、五所川原駅までのきっぷ(870円)とストーブ列車券(500円)を購入します。
列車は既にホームに停車していました。先頭はふつうの気動車で、こちらは乗車券のみで乗車できる一般車両。「津軽21形」という気動車で、津軽鉄道の普通列車はすべてこの車両で運転されています。太宰治にちなんで「走れメロス」の愛称がつけられています。
津軽21形気動車の後ろに、ストーブ列車の客車が連結されています。茶色と赤のツートンカラーが鮮やかで、外見からは古臭さはあまり感じません。
側面には「オハフ331」とあります。元国鉄のオハフ33形という旧型客車です。1930年~40年台に製造された古いものです。33のあとの「1」は、津軽鉄道に譲渡されてから付与された番号のようで、国鉄時代には「オハフ33 520」だったようです。
車内はボックスシートがずらっと並びます。車体は鋼製ですが、床面や側面の内装は木製ですね。座席上の網棚も、本当の意味での「網棚」です。
だるまストーブの煙突が天井につけられているのも特徴的ですね。
車内の2箇所にだるまストーブが設置されています。小さいように見えてかなりパワーがあり、近くの座席に座っていると、熱で汗ばむくらいです。
だるまストーブの燃料は石炭。だるまストーブの横に、バケツに入ったたくさんの石炭が置かれています。だるまストーブに石炭をくべるのは車掌さんの仕事のようで、発車前や走行中に、何度か石炭をくべたり、火力を調整したりされていました。
3月下旬のこの日は、「ストーブ列車」が恋しいという気候でもなかったのですが、関東に比べればまだまだ寒い津軽地方ですので、火のぬくもりはありがたいです。
ストーブ列車の乗客は、私以外には、家族連れ3名と、女性の二人組、一人旅らしき男性2名。余裕でボックスを占有できるくらいの乗車率でした。
ストーブ列車のお楽しみ!だるまストーブで焼く「スルメ」!
13時24分、津軽鉄道の「ストーブ列車」は津軽中里駅を発車しました。
車内には、車掌の他に、アテンダントさんが2名乗車しています。早速、ワゴンを引いて、車内販売にやってきました。
早速、500円のスルメを購入。「袋を開けて待っていてください」と言われたので、袋だけ開けました。すると、軍手をしたアテンダントがやってきて、だるまストーブでスルメを焼いてくれるではないですか。
だるまストーブの火力はすさまじく、ほんの1~2分ほどでスルメは焼けてしまいました。
走行中なのでかなり揺れていますが、だるまストーブで焼かれるスルメの動画です(笑)
車内の他の乗客も、みなスルメを購入して、焼いてもらっていました。やはり、ストーブ列車といえばスルメですね。
焼いたスルメは、アテンダントさんによってあっという間に割かれていき、このとおり! 焼きたてでアツアツのスルメを食べながらの旅になります。
スルメに気を取られているうちにも、ストーブ列車は、のどかな田園地帯を進んでいきます。3月に入って暖かい日が続いているためか、すっかり雪は溶けてしまっています。ストーブ列車といえば、津軽名物の地吹雪の中を走る姿が思い浮かびますが、こんな長閑な風景の車窓も良いものです。
古い駅舎に腕木式信号機、鉄道ファンも見どころ満載!
13時49分、芦野公園駅に到着。芦野公園は湖(芦野湖)がある公園で、「日本さくら名所百選」にも選ばれている桜の名所でもあります。ただ、青森の桜の季節は遅く、見ごろはゴールデンウィークのあたりだそうです。
鉄道ファンにとっては、芦野公園の旧駅舎が見どころの一つです。車内からは裏側しか見えませんが、赤い屋根が特徴的です。
昭和5年の津軽鉄道開通時に建てられた駅舎で、昭和50年(1975年)まで使われていました。現在は国の登録有形文化財として登録されています。駅舎内はカフェ「駅舎」が営業しています。歴史ある建造物を、利用しながら保存しているということですね。
次に津軽鉄道に乗車するときには、この旧駅舎を利用したカフェに立ち寄ってみたいものです。
芦野公園駅あたりの線路は、桜の木に囲まれています。桜の季節になると、まさに「桜のトンネル」になるそうです。
芦野公園駅の次の駅、金木駅の構内には、「腕木式信号機」があります。現在、現役の鉄道路線で利用されているのは津軽鉄道のみで、この金木駅と、終点の津軽五所川原駅に残っています。「腕木式信号機」は、腕の部分の上下で「進行」や「停止」を示す信号機です。
そして、ストーブ列車からは見られませんでしたが、津軽鉄道では「タブレット閉塞」が現役で残っています。この金木駅と津軽五所川原駅で採用されていて、金木駅で列車の行き違いをするときに、タブレットを上下の列車で交換します。
ストーブ列車では、運転士は前の気動車側に乗務しているため、窓からタブレット交換の様子を見ることはできませんでした。
田園風景と津軽富士「岩木山」を眺めながらの旅
金木駅で4分ほど停車。前述のタブレット交換がある下り列車との行き違いのためですね。
金木駅を出ると、再び、長閑な田園風景が広がります。雪はほとんど消えたものの、まだ緑色の植物は少なく、冬から春へと移行していく最中なのでしょう。
14時01分、嘉瀬駅に到着。この駅には、元SMAPの香取慎吾さんがデザインした「夢のキャンパス号」が保存されています。もともはキハ22形という古い気動車です。
田園風景の向こうには、津軽富士「岩木山」が見えています。ちょっと霞んでいますが、その堂々とした山容は、まさに津軽の富士山ですね。独立峰で、とても美しい山です。
14時13分、五農高校前駅に到着。木造の駅舎がいい感じです。古さをあまり感じないので、最近リニューアルされたのでしょうか。
五所川原に近づくと、すでに水が張ってある田んぼもありました。まだ田植えには早いはずですが、もう準備にかかるということでしょうか。津軽の遅い春を待ちわびているようですね。
津軽五所川原駅での付け替え作業はたった3分の早業!
14時22分、「ストーブ列車」は終点の津軽五所川原駅に到着しました。津軽中里駅から45分の旅。もうちょっと乗っていたいと思うくらい良い列車でした。
ホームで写真を撮っていると、すぐに付け替え作業が始まりました。次の「ストーブ列車」運転のため、気動車を「ストーブ列車」の客車の前に移動させる(気動車と客車を入れ替える)作業です。
乗客が降りたあと、気動車と客車の連結が外され、気動車はいったん前進。ポイントを変えたあと、バックで、客車が停まっている横の線路を後退していきます。運転手が窓から顔を出して後方を確認しながらなので、バックしているのでしょう。
そして、再びポイントを超えて、今度は客車の前側に接近してきます。ホームにいる係員の旗の合図で、一気に連結! 近くまで接近していったん停止、その後、ゆっくり動き出して連結、というのはよく見かけますが、津軽鉄道の連結作業は、一度も停止することなく連結してしまいました。
その様子を動画で撮ってみました。ここまで、乗客が下車してからわずか3分! 慣れているのだろうとは思うものの、素晴らしい手際の良さでした。
付け替え作業完了後のストーブ列車。14時48分発の津軽中里行きとなります。ストーブ列車の乗降口には案内板も設置されていました。
津軽鉄道の冬の風物詩「ストーブ列車」、アテンダントの沿線案内も秀逸!
ということで、津軽鉄道「ストーブ列車」の乗車記をお届けしました。
3月下旬ということもあり、「冬の風物詩」という感じでもなかったのですが、空いている列車で、だるまストーブで焼いたスルメをつまみつつ、津軽地方ののどかな田園風景を楽しむことができました。
そして、「ストーブ列車」に乗務しているアテンダントさんの案内がすごく良かったです。この記事で紹介した沿線の見どころは、すべて、アテンダントさんが車内放送で教えてくれたものです。教えてもらわないとわからない、見逃してしまうようなものも、ちゃんと見ることができたのは、アテンダントさんのとても丁寧な案内のおかげです。津軽鉄道には歴史的に価値のある建物や施設が多く残っていますので、この案内は非常によかったと思います。
以上、『【津軽鉄道「ストーブ列車」乗車記】古い客車に乗り、だるまストーブで焼いたスルメを食べながらの汽車旅!』でした。だるまストーブでスルメを焼きながら、長閑な田園地帯を走る旅も、素晴らしいものです。冬季に津軽地方へおでかけの際は、ぜひ乗ってみてください。
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