JR東日本は、同社の観光列車「のってたのしい列車」の指定席料金を全列車、通年840円に統一すると発表しました。現在、一部の列車以外は通常期530円、閑散期330円となっていましたが、すべて840円に値上げされることになります。あわせて、「SLばんえつ物語」のグリーン料金も値上げとなります。
JR東日本の観光列車「のってたのしい列車」などの指定席料金を840円に値上げへ
JR東日本は、観光列車「のってたのしい列車」などの指定席料金を、2023年10月乗車分から通年840円に値上げすると発表しました。対象となる列車は以下のとおりです。
- POKÉMON with YOU トレイン
- SL・EL・DL ぐんま(みなかみ・よこかわ)
- SLばんえつ物語
- おいこっと
- 越乃Shu*Kura
- フルーティアふくしま
- リゾートしらかみ
- リゾートビューふるさと
- びゅうコースター風っこ
これらの列車の指定席料金は、これまで通常期530円、閑散期330円(「びゅうコースター風っこ」のみ通年で530円)でしたが、2023年10月以降は通年で840円に値上げされます。
- 2023年9月30日まで: 通常期530円、閑散期330円
- 2023年10月1日から: 通年840円
「海里」「HIGH RAIL 1375」の指定席料金はすでに840円となっていますので、今回の見直しにより、JR東日本の「のってたのしい列車」の指定席料金は840円に統一されることになります。
また、「SLばんえつ物語」に連結されているグリーン車の料金も値上げとなります。以下のように、150キロを境とする2段階の専用のグリーン料金が設定されます。。
営業キロ | 現行料金 | 10月1日以降 の料金 |
---|---|---|
50キロまで | 780円 | 2,000円 |
100キロまで | 1,000円 | 2,000円 |
150キロまで | 1,700円 | 2,000円 |
151キロ以上 | 1,990円 | 3,000円 |
現在、「SLばんえつ物語」が運転されている新津~会津若松間は111キロですので、全区間に乗車するときのグリーン料金は1,700円から2,000円に値上げされることになります。
「のってたのしい列車」などの指定席料金の見直しの詳細については、JR東日本のニュースリリースをご確認ください。
「のってたのしい列車」は指定席料金の値上げで赤字圧縮へ
今回の「のってたのしい列車」の指定席料金の値上げの理由として、ニュースリリースには以下のように記載されています。
当社を取り巻く経営環境の変化を受けて
(出典)「のってたのしい列車」などの料金を見直します(JR東日本ニュースリリース 2023年7月24日 PDF)
具体的には書かれていませんが、コロナ禍による経営への甚大なダメージと、特に通勤・出張に関連する需要がコロナ前に届かないことを言っていると思われます。
「のってたのしい列車」は観光列車です。観光需要はコロナ前に戻るどころか、今後、物価の安い日本を目指してさらにインバウンドが増えると想定されます。それでも「のってたのしい列車」の指定席料金を値上げせざるを得ない理由としては、そもそも列車単体として利益が出るものではないからでしょう。
「のってたのしい列車」はほぼ全て全車指定席の快速列車として運転されています。乗車券以外に、これまでは530円(閑散期は330円)の指定席料金だけで乗車することができました。列車によっては、新幹線以上にゆったりとしたリクライニングシートや、アテンダントの乗車など、たった530円の指定席料金だけでペイできるとは思えない料金設定でした。
つまり、列車単体では赤字ではあるものの、観光需要を創出することで、「のってたのしい列車」の前後に同社の新幹線や特急列車に乗ってもらうためのツールであると言えます。「リゾートしらかみ」単体では赤字でも、首都圏の観光客が東北新幹線や秋田新幹線で五能線までやってきてくれれば、総合的に見てJR東日本の売上向上につながるということです。
それでも指定席料金を値上げするのは、「のってたのしい列車」の赤字圧縮のためでしょう。指定席料金を530円から840円に値上げしたところで、「のってたのしい列車」単体で黒字になるとは思えません。おそらく、新幹線や特急列車の需要が減少する中で、運輸事業全体でのコスト削減を進める必要があり、その一環としての値上げだと思われます。観光客を誘致するための列車であることから、グレードを落とさずに、赤字削減(結果的にコスト削減)するということでしょう。
「のってたのしい列車」は「快速」を維持、今後も青春18きっぷでの乗車は可能!
乗客側からすると、今回の値上げの影響はそれほど大きくはないでしょう。「のってたのしい列車」は観光列車で、毎日のように乗車する通勤電車とは異なります。せいぜい年に2,3回くらいしか乗らない列車の指定席料金が200円くらい上がったところで、個々の観光客への影響は極めて小さいです。
それよりも、「快速」を維持して、指定席料金を値上げする方向にしたことは、乗り鉄にとってはありがたいことです。他社の観光列車は特急列車として運転されているものが多く、青春18きっぷでは乗車できません。JR東日本の「のってたのしい列車」は、指定席料金は値上げされるものの、今後も快速列車として運転されるでしょうから、青春18きっぷや北海道&東日本パスでも乗車できます。
JR東日本の「のってたのしい列車」は、JR九州やJR四国などの観光列車と比べるとカジュアルな列車が多いことも理由の一つかもしれません。それでも、青春18きっぷの旅で観光列車に気軽に乗れることは、非常にありがたいことです。
「のってたのしい列車」のチケットレス化推進を!
一つ要望があるとすれば、「のってたのしい列車」の指定席券のチケットレス化です。
現在、「のってたのしい列車」の指定席は「えきねっと」で予約・購入できますが、乗車前に紙のきっぷを受け取る必要があります。
「のってたのしい列車」の多くはローカル線を走っていて、停車駅にみどりの窓口や指定席券売機がない駅も少なくありません。「リゾートしらかみ」のように、途中下車して観光し、次の「リゾートしらかみ」に乗車したい場合には、あらかじめ紙の指定席券を発券しておく必要があります。たまたま「リゾートしらかみ」がやってきたから乗ろうと思っても、指定席券の予約・購入まではオンラインでできても、肝心の受け取りができないのです。
また、「のってたのしい列車」に何度も乗っているとわかりますが、「えきねっと」上では満席だったはずなのに、実際には空席が目立つということが珍しくありません。紙のきっぷを受け取ってしまったあと、旅行を中止した場合に、駅まで払い戻しに行くのが面倒という人が多いのでしょう。払い戻したところで、手数料を引かれて2~300円くらいしか戻ってきません。
今回の指定席料金の値上げで多少は改善されるかもしれませんが、根本的にはチケットレス化して、払い戻しもオンラインで完結できるようにすべきでしょう。(本来は満席ではないのに)満席だからと旅行自体を中止してしまった観光客がいると、JR東日本にとっては、本来入るはずだった運賃が入らないばかりか、前述のように「のってたのしい列車」の前後で利用する新幹線や特急列車の収入もなくなってしまいます。
JR東日本と同じ「えきねっと」のシステムを採用しているJR北海道では、「くしろ湿原ノロッコ号」「富良野・美瑛ノロッコ号」「夕陽ノロッコ号」「SL冬の湿原号」で「えきねっとチケットレス座席指定券」を採用していて、チケットレスでこれらの列車に乗車できるようになっています。同じシステムを採用すればよいだけなので、実現は難しくないでしょう。
以上、『JR東日本の観光列車「のってたのしい列車」の指定席料金が通年840円に統一、値上げへ!』でした。昨今の状況から値上げはやむを得ないものの、特急化ではなく指定席料金の値上げという形にしてくれたことは幸いです。一方で、チケットレス化などの利便性向上にも期待したいところです。
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