JR東海、JR西日本、JR九州の3社は「EX予約サービス」「スマートEX」の価格体系の見直しを2023年秋に実施すると発表しました。「EX予約サービス」の割引額が大幅に下がり、東京~新大阪間の普通車指定席では、これまでの1,100円引きから490円引きとなります。無料で登録できる「スマートEX」との差額はたった290円となり、頻繁に東海道・山陽新幹線に乗車する人以外は、「エクスプレスカード」のメリットが大きく減ってしまう見直しとなりそうです。
「エクスプレス予約」「スマートEX」の価格体系の見直しを2023年秋に実施
JR東海、JR西日本、JR九州は、「エクスプレス予約」「スマートEX」の価格体系の見直しを、2023年秋に実施すると発表しました。
価格体系見直しの概要は以下のとおりです。
- 「EX予約サービス」(往復割引含む)、「e特急券」
- 普通車指定席・グリーン車は、所定の運賃・料金からの割引を縮小
- 普通車指定席・グリーン車にシーズン別(通常期・閑散期・繁忙期・最繁忙期)の料金を設定
- 普通車自由席は現在と同額に据え置き
- 「スマートEX」(往復割引含む)
- 山陽新幹線に係る区間で、「のぞみ」「みずほ」の普通車指定席・グリーン車を利用する際の加算額を値上げ(一般の特急券と同額に改定)
- 東海道新幹線内、九州新幹線内完結の区間は価格据え置き
- 「EX早特28ワイド」を新設
- 28日前までの予約でのぞみの普通車指定席が割引になる「EX早特28ワイド」を新設
- 設定区間は、東京・品川・新横浜 ⇔ 名古屋・京都・新大阪
この記事では、「EX予約サービス」「スマートEX」の価格改定(値上げ)について見ていきます。
詳しくは、JR東海、JR西日本、JR九州のニュースリリースをご覧ください。
「EX予約サービス」の割引額が大幅に縮小、東京~新大阪間では1100円→490円に!
今回の価格体系の見直しで、もっとも大きなポイントとなるのが、「EX予約サービス」の割引率の縮小です。
主な区間での、「EX予約サービス」「スマートEX」の現行と改定後の価格、それに、所定価格(正規の運賃+特急券の合計)との差額を以下の表に示します。(各区間の下段が所定価格との差額を示します)
- | - | EX予約サービス | スマートEXサービス | EX予約とスマートEXの差額 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
区間 | 所定価格 | 現行 | 改定後 | 現行 | 改定後 | 現行 | 改定後 |
東京 ⇔ 静岡 | ¥6,470 | ¥5,740 | ¥6,160 | ¥6,270 | ¥6,270 | ¥530 | ¥110 |
¥730 | ¥310 | ¥200 | ¥200 | ||||
東京 ⇔ 名古屋 | ¥11,300 | ¥10,310 | ¥10,880 | ¥11,100 | ¥11,100 | ¥790 | ¥220 |
¥990 | ¥420 | ¥200 | ¥200 | ||||
東京 ⇔ 新大阪 | ¥14,720 | ¥13,620 | ¥14,230 | ¥14,520 | ¥14,520 | ¥900 | ¥290 |
¥1,100 | ¥490 | ¥200 | ¥200 | ||||
東京 ⇔ 岡山 | ¥17,770 | ¥16,300 | ¥17,220 | ¥17,460 | ¥17,570 | ¥1,160 | ¥350 |
¥1,470 | ¥550 | ¥310 | ¥200 | ||||
東京 ⇔ 広島 | ¥19,760 | ¥17,990 | ¥19,180 | ¥19,240 | ¥19,560 | ¥1,250 | ¥380 |
¥1,770 | ¥580 | ¥520 | ¥200 | ||||
新大阪 ⇔ 博多 | ¥16,020 | ¥14,600 | ¥15,640 | ¥15,400 | ¥15,820 | ¥800 | ¥180 |
¥1,420 | ¥380 | ¥620 | ¥200 | ||||
新大阪 ⇔ 熊本 | ¥19,620 | ¥18,300 | ¥19,240 | ¥19,000 | ¥19,420 | ¥700 | ¥180 |
¥1,320 | ¥380 | ¥620 | ¥200 | ||||
新大阪 ⇔ 鹿児島中央 | ¥23,050 | ¥21,730 | ¥22,670 | ¥22,430 | ¥22,850 | ¥700 | ¥180 |
¥1,320 | ¥380 | ¥620 | ¥200 |
※東京⇔静岡のみ「ひかり」「こだま」利用の価格、それ以外は「のぞみ」「みずほ」利用
年会費の元をとるのに東京~新大阪間の3回(1.5往復)の乗車が必要に!
東京~新大阪間で見てみると、EX予約では、普通車指定席の所定価格と比べて1,100円の割引がありましたが、改定後は490円へと縮小されます。
EX予約サービスを利用するには、年会費1,100円の「エクスプレスカード」などのクレジットカードへの加入、または、手持ちのクレジットカードを利用できる「プラスEX」(年会費1,100円)への加入が必要です。
これまで、東京~新大阪間で、「のぞみ」の普通車指定席に片道乗車するだけで、年会費1,100円分の元をとることができていましたが、改定後は最低でも3回(1.5往復)乗らないと元を取ることができなくなります。
- 改定前
- 東京~新大阪 片道で1,100円の割引
- エクスプレスカード等の年会費を、1回の乗車で元を取ることが可能
- 改定後
- 東京~新大阪 片道で490円の割引
- エクスプレスカード等の年会費の元をとるのに最低3回の乗車が必要に!
無料で入会できる「スマートEX」との差額はたった290円に!
今回の価格体系見直しでは、東海道新幹線内、九州新幹線内に閉じる区間では、「スマートEX」の価格に変更はありませんでした。そのため、年会費が必要な「EX予約サービス」と、年会費無料の「スマートEX」の価格差が大幅に縮小してしまいました。
※「スマートEX」は、手持ちのクレジットカードを登録して東海道新幹線等を予約できるサービスで、無料で加入することができます。
上記の表を見ていただくと、東京~新大阪間の片道(のぞみ、普通車指定席)は、EX予約が14,230円、スマートEXが14,520円で、その差額はたった290円しかありません。
スマートEXは年会費が無料ですので、エクスプレスカード等に加入してその差額分の元を取ろうとすると、
- 1,100 / 290 = 3,79...
となりますので、最低でも4回(2往復)は乗車しないといけない計算になります。
これまで、年に1回でも東海道新幹線に乗車する可能性があれば、「エクスプレスカード」を持っておいても損はありませんでしたが、これからは2回以上となります。東海道新幹線や山陽新幹線の割引目的のためだけに「エクスプレスカード」等を保有されている方は、価格体系見直し後も保有し続けるべきかを検討したほうがいいでしょう。
「EX予約サービス」の割引縮小で特定都区市内制度との運賃差に注意!
「EX予約サービス」や「スマートEX」は、新幹線の乗車駅から降車駅までの乗車券+特急券がセットになった商品です。新幹線の乗車駅までのきっぷと、新幹線の降車駅から目的地までのきっぷは、別途購入する必要があります。
通常のJRのきっぷ(乗車券)では、東京や名古屋、大阪といった都市圏では「特定都区市内制度」が適用されます。片道の乗車距離(営業キロ)が200kmを超える場合には、乗車券に特定都区市内制度が適用されます。
2023年現在、特定都区市内として11のエリアが指定されています。具体的には、以下のJR西日本のWebサイトをご覧ください。
「EX予約サービス」と通常のきっぷの価格差が縮小されたことで、通常のきっぷに適用される特定都区市内制度を活用したほうが、EX予約よりも安くなる場合が出てきます。
具体例で考えてみましょう。
荻窪駅から天王寺駅まで、東海道新幹線で移動する場合を考えてみます。EX予約を利用した場合と、通常のきっぷと特急券を購入した場合の合計価格を比較してみます。
- EX予約利用(改定前): 合計 14,168円
- 荻窪駅 → 東京駅: 318円
- EX予約(東京駅 → 新大阪駅): 13,620円
- 新大阪駅 → 天王寺駅: 230円
- EX予約利用(改定後): 合計 14,778円
- 荻窪駅 → 東京駅: 318円
- EX予約(東京駅 → 新大阪駅): 14,230円
- 新大阪駅 → 天王寺駅: 230円
- 通常のきっぷ: 合計 14,720円
- 乗車券(東京都区内→大阪市内): 8,190円
- 指定席特急券: 5,810円
EX予約サービスでは、荻窪~東京間と新大阪~天王寺間の乗車券を別に購入する必要があるため、特定都区市内制度が適用される通常のきっぷよりも高くなってしまう場合が出てきます。
これまでは、東京~新大阪間で、EX予約と通常のきっぷの価格には1,100円もの価格差がありましたので、このような例はほとんど発生しませんでしたが、今後は要注意となります。
なお、エクスプレスカード会員など、EX予約利用者向けには、東海道新幹線の特急券のみの「e特急券」も発売されています。これと通常のきっぷを併用すれば、以下のようになります。
- e特急券+通常のきっぷ併用(改定後): 13,510円
- 乗車券(東京都区内→大阪市内): 8,190円
- e特急券: 5,320円
このように、特定都区市内制度が適用される通常のきっぷと、新幹線の割引が効いた「e特急券」を併用するのがお得になる場合が多いです。ただし、通常のきっぷ、e特急券ともに、乗車前に紙のきっぷとして受け取っておく必要があります。「EX予約」や「スマートEX」のようにチケットレスでの乗車ができませんし、e特急券を受け取ったあとの変更は窓口でないとできませんので、利便性が犠牲になります。
こんな面倒なことを考えなくても、「年に1回でも乗ればお得になる」というのがエクスプレスカードやEX予約のメリットだったのですが、ライトユーザにとっては、今回の割引額の大幅縮小で、「よく考えて使わないと損するかもしれない」サービスになってしまったという印象です。
山陽新幹線では「EX予約サービス」と「スマートEX」の価格差はたった180円に!
東海道新幹線でも「EX予約サービス」と「スマートEX」の価格差はかなり縮小してしまいましたが、山陽新幹線(九州新幹線にまたがる区間含む)では、それに輪をかけて縮小しています。
山陽新幹線、九州新幹線の主な区間の、改定前と改定後の「EX予約サービス」と「スマートEX」の価格差は以下のとおりです。
区間 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
新大阪 ⇔ 広島 | 690円 | 180円 |
新大阪 ⇔ 博多 | 800円 | 180円 |
新大阪 ⇔ 熊本 | 700円 | 180円 |
新大阪 ⇔ 鹿児島中央 | 700円 | 180円 |
博多 ⇔ 熊本 | 330円 | 330円 |
博多 ⇔ 鹿児島中央 | 330円 | 330円 |
※九州新幹線内では今回の価格体系見直しでの値上げはないものとして表示
山陽新幹線では、これまで「EX予約サービス」の割引率がかなり高かったのですが、今回の改定では、東海道新幹線以上に割引率が縮小されてしまいます。
例えば、新大阪~博多(のぞみ、普通車指定席)のEX予約の価格は、これまでの14,600円から15,640円へと、1,040円もの値上げとなります。「スマートEX」との価格差も、これまでの800円から180円へと縮小されます。
新大阪~博多間だけでなく、山陽新幹線を含む区間では、「EX予約サービス」と「スマートEX」の価格差はたった180円になってしまいます。
JR西日本では、エクスプレス予約を利用できるクレジットカードとして「J-WESTカード エクスプレス」(年会費1,100円)を出していますが、こちらも年間の利用頻度をよく考えないといけなくなりそうです。
以上、『東海道・山陽新幹線「EX予約サービス」の割引額を大幅縮小へ! 東海道新幹線ではスマートEXとの価格差が縮小』でした。今回は純粋な値上げではなく、あくまで「割引サービスの値上げ(改悪)」ですので、影響を受ける人は限定的と思われますが、ライトユーザの大量解約につながる恐れはありそうです。
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「こだま」限定ですが、東海道新幹線に格安で乗車できる旅行商品「ぷらっとこだま」の紹介記事です。東京~新大阪が10,900円とお得です。前日までネットで購入できますので、使い勝手も良好な商品です。
こちらも「こだま」(一部の「ひかり」含む)限定ではありますが、山陽新幹線に格安で乗車できる日本旅行の旅行商品「バリ得」の紹介記事です。
同じく、山陽新幹線「こだま」に格安で乗車できるJTBの旅行商品「トクトク!ひかり・こだま」の紹介記事です。
上記の旅行商品も含め、山陽新幹線のお得なきっぷをまとめて紹介している記事です。使い分けの方法も解説していますので、ぜひご覧ください。
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