JR北海道がバス転換を求めていた5線区のうち、最後まで残った根室本線の富良野~新得間ですが、2024年3月末での廃止・バス転換がほぼ確定しました。2023年3月下旬にJR北海道と沿線の4市町村で廃止・バス転換を合意、2023年3月31日にJR北海道が国交省に廃止届を提出しました。
JR北海道が根室本線(富良野~新得間)の廃止届を国交省に提出、2024年3月末で廃止へ
JR北海道は、廃止・バス転換を求めていた根室本線(富良野~新得間 81.7km)について、2023年3月30日に沿線4市町村と廃止・バス転換で合意、同3月31日に国土交通省に鉄道事業廃止届を提出しました。
廃止区間は富良野~新得間(81.7km)、廃止予定日は2024年4月1日(最終運行日は3月31日)となります。これにより、根室本線の富良野~新得間の廃止はほぼ確定しました。
JR北海道からも正式にニュースリリースが出ています。
根室本線(富良野~新得間)を巡っては、2022年1月に大筋で廃止・バス転換の方向性が合意されていましたが、廃止日が未定でした。おそらく廃止後の代替バスを含む交通体系の協議が進められていたものと思われます。
廃止届が提出された2023年3月31日は、奇しくも留萌本線の石狩沼田~留萌間の最終運行日。今年度末に続き、来年度末にも、また一つ、鉄度が消えていくことになりました。
かつては札幌と道東を結ぶ大動脈、2016年の台風被害で被災
今回、廃止となる富良野~新得間は、滝川~釧路~根室を結ぶ長大な根室本線(443.8km)の中間部分です。
かつては、札幌と道東を結ぶ特急列車が行き来する大動脈でしたが、1981年に石勝線が開業すると、札幌と道東(帯広・釧路)を結ぶ特急列車は全て石勝線経由での運転となり、滝川~新得間はローカル線となりました。
廃止される区間を走る列車として印象的だったのが「日本一長距離を走る普通列車」でした。かつては「2427D」(のちに「2429D」に変更)という列車番号で知られていた、乗り鉄には有名な列車です。滝川駅から釧路駅まで、308.4kmもの距離を8時間以上もかけて走る列車でした。
今回廃止される区間に含まれる東鹿越~新得間は、2016年8月の台風被害で被災。同じ年の秋にJR北海道が「単独で維持困難な線区」を発表したこともあり、復旧作業が始まることなく、2023年春時点でもバスによる代行輸送が続けられています。
沿線自治体と廃止・バス転換が合意されたことにより、東鹿越~新得間は復旧されることなく廃止となります。日本一の長距離普通列車「2427D」も復活することはなくなってしまいました。
JR北海道がバス転換を目指した線区では唯一の中間部分、根室本線は分断へ
今回の根室本線 富良野~新得間の廃止により、JR北海道が廃止・バス転換を求めていた5線区については、全て廃止ということで決着しました。
路線 | 線区 | 状況 |
---|---|---|
石勝線 | 新夕張~夕張 | 2019年4月に廃止 |
札沼線 | 北海道医療大学 ~新十津川 |
2000年5月に廃止 |
日高本線 | 鵡川~様似 | 2021年4月に廃止 |
留萌本線 | 石狩沼田~留萌 | 2023年4月に廃止 |
深川~石狩沼田 | 2026年4月に廃止予定 | |
根室本線 | 富良野~新得 | 2024年4月に廃止予定 |
いずれも輸送密度が200人/日に満たない線区ですが、根室本線の富良野~新得間が他の線区と異なるのは、末端部分ではなく、路線の中間部分という点です。それも「本線」の中間部分なのです。
とはいえ、前述のとおり、札幌~帯広・釧路の都市間輸送の使命を石勝線に譲ったあとは、純然たるローカル線として運行してきました。
富良野は観光地ですが、富良野より南側を目指す観光客は少なく、富良野駅から南側の区間はいつも空いていました。台風被害で東鹿越~新得間が不通となったあとはなおさらです。
かつては札幌と道東の大動脈であったことから、災害時などの迂回路としても有用ではないかと思っていましたが、その観点が大きく取り上げられることはなかったようです。JR北海道と沿線自治体での協議となった段階で、沿線自治体に(直接的な)メリットのない迂回路としての役割を議論することはなかったのでしょう。
このあたり、本来は国や北海道が議論を主導すべきだと思いますが、そうならなかったのは残念です。
ということで、全長443.8kmの根室本線は、2024年4月以降、滝川~富良野間と新得~根室間に分断されてしまいます。
代行バスはキャパに限りあり! 乗り納めはお早めに!
沿線自治体との合意があれば廃止の前倒しは可能ですが、今のところそういった話は聞こえてこないので、現時点では2024年3月31日が富良野~新得間の最終運行日ということになりそうです。
正式に廃止日が決まったことで、これから乗り納めをされる方が増えてくると思います。東鹿越~新得間は代行バスでの運転で、キャパシティに限りがありますので、混雑する前に早めの乗り納めをおすすめします。
富良野~新得間は車窓の見どころが多い区間です。
富良野から東鹿越までは、長閑な田園風景や空知川、かなやま湖が車窓を彩ります。
東鹿越駅で代行バスに乗り換えとなります。東鹿越駅から先へも線路は続いているように見えますが、草に覆われています。この区間、二度と列車が走ることはありません……。
代行バスでは、かつて日本三大車窓の一つに数えられていた狩勝峠を超えていきます。現在の(被災前の)根室本線の線路は新線に付け替えられてしまい、狩勝峠を通らないのですが、代行バスは狩勝峠の絶景区間を経由します。代行バスの車窓からも、一瞬ではありますが、広大な十勝平野を見ることができます。
こんな感じで、車窓も素晴らしい区間です。ぜひ早めの乗り納めをおすすめします。
根室本線の富良野~新得間の乗車記(代行バス含む)については、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
以上、「根室本線 富良野~新得間が2024年3月末で廃止へ! JR北海道が沿線自治体と合意し廃止届を提出!」でした。また一つ、素晴らしい車窓を提供してくれた鉄路が消えていきます。鉄道としてこの区間に乗車できるチャンスは残り1年。乗り納めはお早めに。
コメント