2023年のダイヤ改正(首都圏)では、高崎線特急の見直しと青梅線の輸送体系の変更が大きなトピックです。しばらく続いていた大減便はひと段落で、コロナ後に向けて、需要にあったダイヤへの模索が続いているようです。この記事では、2023年春のJR東日本(首都圏)のダイヤ改正のポイントと気になる点についてまとめます。
2023年春のダイヤ改正で高崎線特急と青梅線輸送体系の見直しへ!
JR各社は、2023年春のダイヤ改正の概要を発表しました。JR全体でのダイヤ改正のトピックについては、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
コロナ禍や働き方改革の影響を受けて、一昨年(2021年春)のダイヤ改正では、首都圏の通勤路線の終電繰上げが、昨年(2022年春)のダイヤ改正ではラッシュ時間帯の減便が実施されました。
今年は、過去2年ほどの大きな減便はなく、コロナ禍に伴う減便はひと段落といったところです。一方、首都圏では、高崎線特急の抜本的な見直しや、青梅線の輸送体系の変更など、比較的大きな変更もあります。
この記事では、首都圏エリアにおける2023年ダイヤ改正のトピックについてまとめます。
高崎線特急「草津」はE257系「草津・四万」へ! 特急の運行体系を見直し
高崎線では、特急「草津」「スワローあかぎ」などの運行体系の見直しが実施されます。また、普通列車では両毛線直通が大幅に削減されます。
特急「草津」はE257系全車指定席の「草津・四万」へ
現在、651系7両編成で運転されている特急「草津」は、ダイヤ改正以降、E257系5両編成の特急「草津・四万」へとリニューアルされます。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
列車名 | 草津 | 草津・四万 |
車両 | 651系 | E257系 |
編成 | 7両 | 5両 |
グリーン車 | 〇 | × |
自由席 | 〇 | × |
列車名と車両の変更に加えて、ダイヤ改正以降の特急「草津・四万」では、自由席がなくなり、全車指定席での運転となります。また、グリーン車もなくなり、普通車のみのモノクラス編成となります。
特急「草津・四万」の全車指定席化は、JR東日本が首都圏の特急列車で導入を進めている「新たな着席サービス」とは異なり、純粋な全車指定席となります。そのため、指定席特急券を持っていないと乗車することができなくなります。
運転本数は今のところ変更はなさそうですが、土休日運転の「草津32号」の時刻が繰り下げられます。
- 改正前「草津32号」: 長野原草津口 12:05発 → 上野 14:24着
- 改正後「草津・四万34号」: 長野原草津口 14:06発 → 上野 16:32着
これにより、ダイヤ改正後は、土休日運転の列車も含めると、長野原草津口駅発は13時台(現「草津2号」)、14時台(「草津・四万34号」)、15時台(現「草津4号」)となりそうです。
特急「スワローあかぎ」は「あかぎ」に変更、新たな着席サービスで運転へ
高崎線の上野~高崎間で運転されている特急「スワローあかぎ」「あかぎ」は、列車名を「あかぎ」に統一のうえ、平日・土休日ともに新たな着席サービスでの運転に変更されます。「草津」と同じく、車両もE257系に変更となります。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
平日 | スワローあかぎ スワローサービス |
あかぎ 新たな着席サービス |
土休日 | あかぎ 指定席+自由席 |
あかぎ 新たな着席サービス |
これまで、平日は特急「スワローあかぎ」としてスワローサービス(新たな着席サービスと同等・同料金のサービス)で、土休日には特急「あかぎ」として通常の指定席+自由席の編成で運転されていました。
ダイヤ改正後は、列車名を全て「あかぎ」に統一し、平日・土休日ともに新たな着席サービスで運転されるようになります。
また、平日運転の一部の列車の運転区間が短縮されます。
列車名 | 発駅 | 着駅 | |
---|---|---|---|
改正前 | スワローあかぎ1号 | 上野 18:00 | 本庄 19:16 |
改正後 | あかぎ1号 | 上野 18:00 | 鴻巣 18:49 |
改正前 | スワローあかぎ8号 | 高崎 08:11 | 上野 09:39 |
改正後 | あかぎ8号 | 本庄 08:25 | 上野 09:39 |
今回の改正で少し気になったのは、特急「草津・四万」は純粋な全車指定席、特急「あかぎ」は新たな着席サービスとなり、サービスが分かれたところです。特急「草津・四万」は純粋に観光客向けの列車、特急「あかぎ」は(特に平日は)通勤特急という違いを反映しているのかもしれません。
651系は引退? 臨時列車で残る?
また、今回の高崎線特急の車両変更により、651系の行く末が気になります。高崎支社のリリースには「高崎線特急にE257系リニューアル車両を投入し、着席サービスを向上します」と書かれていますので、特急「草津・四万」、特急「あかぎ」の定期列車はE257系での運転となるものと思われます。
一方、以下のような注記もあります。
5両編成(普通車のみ)で、窓側に電源コンセントを設置します。なお、電源コンセントを設置していない車両で運転する場合があります。
(出典)2023年3月ダイヤ改正について(JR東日本高崎支社ニュースリリース 2022年12月16日 PDF)
臨時列車などで、E257系リニューアル車両以外の車両を利用する可能性があることを示唆しています。この「電源コンセントを設置していない車両」というのが651系のことを指すのか、あるいは別の車両のことなのかはわかりません。
いずれにしても、651系が定期運用から外れることは間違いなさそうです。乗り納めは早めに。
両毛線直通の高崎線列車は大幅に削減!
現在、高崎線の普通列車の一部は、両毛線に乗り入れて前橋発着となっていますが、ダイヤ改正後は、この両毛線直通の高崎線の列車が大幅に削減されます。
- 下り(両毛線直通 前橋行き)
- 改正前 8本 → 改正後 1本
- 上り(前橋発 高崎線直通)
- 改正前 12本 → 改正後 8本
特に下り列車は大きく削減され、1本を除いて高崎止まりとなります。
この両毛線直通の高崎線普通列車は、上野東京ラインを経由して前橋~熱海間という長距離を走る列車だったのですが、今回のダイヤ改正で大幅に減ってしまいます。
青梅線の運行体系が大幅変更、青梅~奥多摩は分離、中央線との直通列車は増加へ
首都圏の普通列車では、青梅線の運行体系が大きく変更になります。青梅駅での列車の分離が明確になり、青梅駅をまたぐ列車はなくなります。一方、中央線からの直通列車は大幅に増加します。
青梅駅で運行体系を分離、中央線直通列車は大幅増加へ!
青梅線の運行体系の変更に関しては、青梅駅での分離が明確になります。
- 青梅~東京間の直通列車が大幅に増加
- 奥多摩・御嶽~立川・東京間の直通運転を取り止め
まず、中央線との直通列車が、データイムを中心に大幅に増加します。
(出典)2023年3月ダイヤ改正について(JR東日本八王子支社ニュースリリース 2022年12月16日 PDF)
JR東日本のニュースリリースに掲載されている青梅駅のデータイムの時刻表(平日)ですが、オレンジや青でハッチされている東京行きの列車が増えていることがわかります。
なお、中央線・青梅線直通列車の増加本数は以下のようになります。
曜日 | 上り | 下り |
---|---|---|
平日 | 18本 | 17本 |
土休日 | 21本 | 19本 |
青梅線(立川~青梅)の沿線から中央線方面への利便性は、かなり高くなりそうです。
青梅以遠の列車は青梅駅で折り返しへ、ワンマン運転も開始!
中央線直通の列車が大幅に増える反面、青梅~奥多摩間の列車の運行が青梅駅で分離され、奥多摩・御嶽~立川・東京間の直通列車の運転が取りやめとなります。
これまでは、朝時間帯を中心に、奥多摩駅や御嶽駅から立川行き、東京行きの列車がありましたが、ダイヤ改正以降は基本的に青梅止まりとなります。
また、青梅~奥多摩間でワンマン運転が開始されます。車両はこれまでと変わらずE233系4両編成で、全てのドアからの乗降が可能です。
ホリデー快速おくたま号は青梅駅で分離、あきがわ号は廃止!
(出典)2023年3月ダイヤ改正について(JR東日本八王子支社ニュースリリース 2022年12月16日 PDF)
青梅駅での運転分離は、土休日に運転されている「ホリデー快速おくたま号」にも影響します。ダイヤ改正前は新宿駅から奥多摩駅まで直通していましたが、ダイヤ改正後は青梅行きとなり、青梅駅で乗り換えが必要となります。
青梅~奥多摩間の「ホリデー快速おくたま号」は臨時列車となり、利用が見込まれる時期のみの運転となります。
一方、「ホリデー快速おくたま号」と併結され、拝島駅で分離されていた「ホリデー快速あきがわ号」は廃止となります。ダイヤ改正後は、「ホリデー快速おくたま号」を拝島駅で下車し、後続の武蔵五日市行きの各駅停車に乗り換える必要があります。
中央線・青梅線には2024年度以降にグリーン車の導入が予定されています。グリーン車が導入されると8両+4両の編成となり、青梅線の青梅~奥多摩間に8両編成が入れなくなります。青梅駅でのホーム増設工事が完成したこのタイミングで、「ホリデー快速おくたま号」の運行体系も変更したのでしょう。
中央線・青梅線へのグリーン車導入については、以下の記事にまとめています。
東海道線の通勤特急「湘南」下り1本増発、快速「アクティー」は消滅へ
東海道線では、通勤特急「湘南」の下り列車が1本増発されます。
(出典)2023年3月ダイヤ改正について(JR東日本横浜支社ニュースリリース 2022年12月16日 PDF)
夕夜間帯の下り「湘南」は、これまでは東京駅18時発が最も早い列車でしたが、ダイヤ改正後は、さらに30分早い東京駅17時30分発の列車が新設されます。
一方、東京駅23時発「湘南19号」(現「湘南17号」)は、小田原行きから平塚行きに変更となります。
コロナ禍を経て、遅い時間帯の需要が減少する一方、早い時間帯に帰宅する人が増えたことを反映した改正ですね。
一方、東海道線の普通列車では、夜間に下り2本だけ残っている快速「アクティー」が消滅します。
種別 | 発駅 | 着駅 | |
---|---|---|---|
改正前 | 快速アクティー | 東京 19:48 | 小田原 21:02 |
改正後 | 普通 | 上野 19:40 | 小田原 21:16 |
改正前 | 快速アクティー | 東京 20:48 | 小田原 22:00 |
改正後 | 運転取りやめ | - | - |
2本残っている快速「アクティー」のうち、1本は上野駅始発の普通列車に変更になり、もう1本は列車そのものが運転取りやめとなります。
快速「アクティー」がなくなることにより、東海道線の料金不要の速達サービスは、湘南新宿ラインの「特別快速」のみとなります。といっても、「特別快速」が運転されているのはデータイムのみ。ラッシュ時間帯は、各駅に停車する普通列車と特急「湘南」のみとなります。
東海道線は前回のダイヤ改正で減便となっています。速達列車の通過駅の停車本数が極端に少なくならないように、速達列車から消えていきますが、今回の快速「アクティー」の消滅は象徴的ですね。
東武直通特急の輸送体系を見直し、定期「きぬがわ」は減便へ
新宿と東武日光・鬼怒川温泉を結ぶ東武直通特急「日光」「きぬがわ」の輸送体系が大幅に見直しとなります。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
日光 | 定期 1往復 | 定期 1往復 臨時 1往復 |
きぬがわ | 定期 3往復 | 定期 1往復 臨時 2往復 |
新宿~東武日光を結ぶ特急「日光」は、定期列車は1往復と変わりませんが、「日光1号」の新宿発が7時31分から9時34分へと大幅に繰り下げられます。加えて、繁忙期には1往復の臨時列車が設定されます。現在の「日光1号」のスジは、臨時「日光21号」となります。
新宿~鬼怒川温泉を結ぶ「きぬがわ」は、定期列車が3往復から1往復へと大幅に減便となります。繁忙期の臨時列車として2往復が設定されますが、毎日運転の「きぬがわ」は1往復のみと寂しいものになってしまいます。
具体的なダイヤは、JR東日本大宮支社のニュースリリースに掲載されています。
総武線快速は日中時間帯減便、成田空港発着は毎時1本に!
総武線快速は、日中時間帯の運転本数が見直しとなり、成田空港駅を発着する快速列車は毎時1本となります。
改正前は、日中時間帯に毎時1本の時間と2本の時間がありましたが、この毎時2本の列車のうち1本が減便となります。日中時間帯の総武線快速の減便の穴埋めとして、千葉~成田空港間の普通列車(8両編成)が運転されます。
詳しい内容は時刻表が発売されないとわかりませんが、代替となる普通列車の運転時刻からすると、運転取りやめとなるのは以下の列車と思われます。
- 下り
- 東京 10:46発 → 成田空港 12:19着
- 東京 12:45発 → 成田空港 14:19着
- 東京 14:47発 → 成田空港 16:19着
- 上り
- 成田空港 12:33発 → 東京 14:04着
- 成田空港 14:35発 → 東京 16:00着
- 成田空港 16:33発 → 東京 18:08着
成田空港への需要はこれから戻ると思われますが、そのときに15両編成、グリーン車付きの快速列車を減便してしまって大丈夫なのでしょうか。それに、改正後は千葉駅で乗り換えが必要となりますので、京成の特急に流れる可能性もありそうです。
以上、『【2023年 JR東日本(首都圏)ダイヤ改正】減便はひと段落、高崎線特急と青梅線の運行体系見直しへ!』でした。大減便はひと段落し、ここ数年よりは小幅な改正となりました。それでも、細かく見ていくと、コロナ後の需要にあわせた改正という側面が強そうです。
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