JR各社は、2023年春のダイヤ改正の概要を発表しました。コロナ禍に伴う減便はひと段落し、ここ数年では最も小幅な改正になっています。その中でも、大阪駅うめきたエリアの開業が最も大きなトピックでしょう。また、上越新幹線は全列車をE7系に統一、最高速度が275km/hとなり、所要時間が大幅に短縮されます。
この記事では乗り鉄的な視点で興味深いトピックをまとめます。
2022年3月18日、JR各社はダイヤ改正を実施
JR各社は、2023年3月18日にダイヤ改正を実施すると発表しました。各社のニュースリリースは以下のとおりです。(全てPDFファイルへのリンクです)
- 2023年3月ダイヤ改正について(JR北海道)
- 2023年3月ダイヤ改正について(JR東日本)
- 2023年3月ダイヤ改正について(JR東海)
- 2023年春のダイヤ改正について(JR西日本)
- 2023年3月一部ダイヤ改正について(JR四国)
- 2023年春ダイヤ改正(JR九州)
大阪駅うめきたエリア開業! 「はるか」「くろしお」が大阪駅に停車、おおさか東線は全列車が大阪駅に乗り入れへ!
(出典)2023年3月18日にダイヤ改正を実施します(JR西日本近畿統括本部 2022年12月16日 PDF)
ダイヤ改正にあわせて、大阪駅のうめきたエリアが開業します。新大阪駅と大阪環状線を結ぶ線路の一部を地下に移設、大阪駅の地下ホームとして新たに開業するものです。
うめきたエリアの開業により、これまで大阪駅に停車していなかった特急「はるか」「くろしお」が新たに停車するようになります。また、おおさか東線が新たに大阪駅に乗り入れるようになります。
特急「はるか」「くろしお」が大阪駅に乗り入れ! 大阪~関西空港・和歌山・南紀への所要時間が短縮!
大阪駅うめきたエリアの新地下ホームには、新たに特急「はるか」と特急「くろしお」の全列車が停車するようになります。停車する列車の本数は以下のとおりです(臨時列車含む)。
- 特急「はるか」: 30往復(60本)
- 特急「くろしお」: 18往復(36本)
これにより、大阪駅~関西空港間の所要時間が、関空・紀州路快速利用に比べて20~24分、天王寺駅で特急列車から大阪環状線に乗り換えた場合と比べて5~6分程度短縮されます。
また、和歌山駅~大阪駅間の所要時間も同様に30分程度改善されることになります。
特急「はるか」は京都駅発着ですし、野洲駅・草津駅発着の列車もありますので、これらの方面から大阪駅へのアクセスも便利になりそうです。
おおさか東線が大阪駅に乗り入れ!
(出典)2023年3月18日にダイヤ改正を実施します(JR西日本近畿統括本部 2022年12月16日 PDF)
普通列車では、おおさか東線の新大阪駅発着の全列車が大阪駅に乗り入れるようになります。普通列車67往復に加えて、大和路線と直通する直通快速4往復が乗り入れます。
- 普通列車: 67往復
- 直通快速: 4往復
おおさか東線沿線から乗り換えなしで大阪駅まで直通しますので、所要時間が短縮(約4分)されるだけでなく、便利にもなりますね。
新幹線は所要時間短縮とダイヤ微調整
各社の新幹線は、所要時間の短縮と、ダイヤのパターン化などの一部見直しがメインの改正となります。
上越新幹線は最大7分、北陸新幹線は最大2分短縮!
JR東日本の上越新幹線、北陸新幹線では、大宮~高崎・新潟間の最高速度が240km/hから275km/hに向上することにより、所要時間が短縮されます。
路線 | 所要時間 短縮効果 |
最速列車 |
---|---|---|
上越新幹線 | 最大7分 | とき311号 東京~新潟 1時間29分 |
北陸新幹線 | 最大2分 | かがやき509号 東京~金沢 2時間25分 |
今回の最高速度の向上は、上越新幹線の大宮~新潟間での騒音対策等の地上設備工事が完了したことによるものです。
上越新幹線は大宮~新潟という長い区間で最高速度が向上するため、所要時間が7分も短縮され、最速列車となる「とき311号」は東京~新潟間での所要時間が1時間半を切ります。一方、上越新幹線と線路を共有する北陸新幹線は、大宮~高崎間のみの速度向上となるため、所要時間の短縮効果は2分程度となります。
なお、今回のダイヤ改正で、上越新幹線の全ての列車がE7系に統一されます。E2系の活躍の場はさらに狭まり、東北新幹線の東京~仙台間のみとなります。
東海道・山陽新幹線もわずかに速達化、山陽新幹線直通「のぞみ」を増設へ
東海道新幹線は、定期「のぞみ」の一部列車の所要時間を短縮します。
- 東京~新大阪間を2時間27分で運転する定期「のぞみ」を上下合計17本増やす
- 早朝・夜間帯の定期「のぞみ」(のぞみ70号、のぞみ252号)を新大阪~東京間2時間24分に速達化
同様に、山陽新幹線に直通する「のぞみ」の所要時間も短縮されます。
区間 | 平均所要時間 (改正後) |
短縮時間 |
---|---|---|
東京~姫路 | 2時間58分 | 2分短縮 |
東京~岡山 | 3時間16分 | 1分短縮 |
東京~広島 | 3時間54分 | 1分短縮 |
また、山陽新幹線では「のぞみ」「みずほ」「さくら」の最大運転本数を1時間あたり上下各8本から各9本へに拡大します。これにより、東海道新幹線~山陽新幹線を直通する臨時「のぞみ」を1本増やすことができるようになります。
東海道新幹線のダイヤは「のぞみ12本ダイヤ」でほぼ完成したと思われましたが、山陽新幹線との直通本数の増加や、地道な所要時間短縮で、さらに改善を進めているようです。
高崎線特急「草津」がE257系「草津・四万」へ、両毛線直通は大幅減
高崎線では、651系で運転されている特急「草津」が、E257系リニューアル車を利用した特急「草津・四万」に変更になります。
また、平日に運転されている「スワローあかぎ」は、列車名が「あかぎ」に変更になり、平日・土休日ともに「あかぎ」に統一されます。指定席のサービスも、新たな着席サービスに統一されます。
現在、特急「草津」「あかぎ」などで利用されている651系は、E257系リニューアル車で置き換えになるようです。これで引退となるのか、臨時列車等で引き続き利用されるのかはわかりませんが、常磐線特急で活躍した651系の終焉の時が近づいているのは間違いないようです。
一方、普通列車では、高崎線~両毛線を直通する列車(前橋発着の列車)が大幅に削減されます。特に、下り列車が多く削減されます。具体的には以下のようになります(平日ダイヤ)。
- 下り(両毛線直通 前橋行き)
- 改正前 8本 → 改正後 1本
- 上り(前橋発 高崎線直通)
- 改正前 12本 → 改正後 8本
下り列車の両毛線直通の前橋行きは夜間の1本のみとなります。基本的に高崎駅での乗り換えが必要になります。
特急「オホーツク」「大雪」全列車をキハ283系で運転、キハ183系は運行終了へ!
JR北海道の札幌~網走を結ぶ特急「オホーツク」、旭川~網走を結ぶ特急「大雪」の車両が、これまでのキハ183系からキハ283系に置き換えられます。これにより、札幌~網走間で平均2分(最大5分)の所要時間短縮となります。
(出典)2023年3⽉ダイヤ改正について(JR北海道ニュースリリース 2022年12月16日 PDF)
なお、キハ283系「オホーツク」「大雪」は、指定席2両+自由席1両の3両編成を基本編成として、利用状況に合わせて増結するとのことです。現在のキハ183系と比較すると、以下のようになります。
車両 | 指定席 | 自由席 | グリーン席 |
---|---|---|---|
キハ183系 | 1.5両 | 1.5両 | 1両 |
キハ283系 | 2両 | 1両 | なし |
グリーン車がなくなってモノクラス編成になります。また、自由席が1両のみとなります。自由席の席数が減ることになりますので、この点は要注意ですね。
一方、JR北海道は、キハ183系の運行を、ダイヤ改正の前日の2023年3月17日で終了すると発表しました。
キハ183系はJR北海道の標準的な気動車特急車両として1986年にデビュー、道内の主要路線で活躍してきました。現在は特急「オホーツク」「大雪」のみで利用されています。
近年は老朽化が激しく、故障による特急列車の運休も頻繁にありました。JR北海道の厳しい経営状況を反映しているようですが、最後まで無事に走り抜けてほしいところです。
篠ノ井線に通勤特急? E353系3両編成の臨時特急を新設!
篠ノ井線の塩尻・松本~長野間に、E353系3両編成を利用した臨時特急列車が新設されます。ダイヤは以下のようになっています。
- 下り: 塩尻 07:37発 → 長野 08:59着(停車駅: 松本、明科、篠ノ井)
- 上り: 長野 20:47発 → 松本 21:49着(停車駅: 篠ノ井、明科)
朝7時台の長野行きと、夜20時台の松本行きの1往復のみの設定ですので、ニュースリリースにもあるように通勤利用を想定した設定のようです。
臨時列車ですので毎日運転ではないと思われますが、通勤特急であれば平日のみ運転という形になる可能性が高そうです。
中央本線の特急「あずさ」を12両編成から9両編成に減車したことで、E353系3両編成(付属編成)が余っています。その付属編成を活用した特急列車ということになりそうです。
JR東日本に新駅2駅開業、1駅廃止、JR北海道は1駅廃止へ
今回のダイヤ改正では、JR東日本エリアで2駅の新駅が開業します。
- 幕張豊砂(まくはりとよすな)駅: 京葉線 新習志野~海浜幕張間
- 前潟(まえがた)駅: 田沢湖線 盛岡駅~大釜駅間
幕張豊砂駅は、イオンモール幕張新都心に隣接する場所に新設されます。イオンモールへの最寄り駅として賑わいそうです。
前潟駅も、イオンモール盛岡のすぐ近くに新設されます。近隣からの通勤通学需要に加えて、イオンモールへのアクセスも見込んだ新駅となります。
一方、山田線の通年通過駅となっていた「平津戸駅」を廃止します。
また、JR北海道は、日高本線の「浜田浦駅」を廃止します。浜田浦駅の乗車人員は、平成29年~令和3年の5年間平均で2.4名/日となっています。利用が見込めないということで、JR北海道と自治体が廃止で合意していました。
以上、『【2023年春 JRダイヤ改正】大阪駅うめきたエリア開業で「はるか」「くろしお」全列車が大阪駅に停車へ! 上越新幹線はE7系に統一、所要時間は7分短縮へ!』でした。ここ2~3年続いていたコロナ禍に伴う減便はひと段落。全体としては小幅な改正となりました。
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